公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

実態なき住民合意

都市計画道路高倉下長後線をご存知ですか?>
 60年前に都市計画決定された高倉下長後線が、市内の未着手都市計画道路等19区間の内、優先度1で優先着手区間に位置付けられています。藤沢市平成27年12月定例会の私の一般質問に、平成28年度の都市計画変更に向け手続きを進め(既に遅延)、5年以内の着手を目指すと答弁しています。
 高倉下長後線は長後小学校の北側に隣接しており、これが幹線道路となれば小学校前の交通量は圧倒的に増え学校環境は一変します。長後地域を南北に分断することにもなり、多くの地域住民の生活環境にも影響します。
 しかし、この何十億円にも上る、長後地域に多大な影響を及ぼす道路事業が本格始動していることを、実感を持って受け止めている地域住民はまだまだ多くはないように思われます。

<本当に最優先課題?地域の合意形成はできてる?>
 未着手道路の優先順位を整理した平成28年3月策定の藤沢市道路整備プログラムは、地域の要望とは関係なく、費用対効果などの客観指標によるものなのですが、市当局は、長後地域の住民間においても高倉下長後線の整備が『最優先課題』に位置付けられていると認識している、と答弁しています。また、長後地区郷土づくり推進会議や前身の長後地域経営会議からの要望を受け、これまでの全体集会などを通じ地域の合意形成はなされている、と言うのですが、それら地域の会議体から出された要望書自体も、その要望が地域の声を集約したと言い得る根拠など妥当性を検証するための記録も残っておらず、市当局が地域の最優先課題と位置付けるに至った政策決定過程は極めて不透明であることがこの6月の定例会一般質問で明らかになりました。
 長後駅周辺の朝夕の慢性的な交通渋滞が長後地区に大きな影響を及ぼしているのは明らかですが、直近の沿道地権者への説明会で公表された情報によると、平成23年の調べではありますが、長後駅前踏切を12時間に通る車両7000台の内、長後を通過するだけの通過交通は1960台と約28%に過ぎないことも分かりました。
 交通渋滞解消のためには道路規制を変えるなど様々な手段があります。幻となっていた60年前の都市計画に、長後地区再建のカンフル効果を期待してのことだとは思われますが、他にも様々考えうる手段との比較検討や、高倉下長後線の整備自体を住民が望んでいるのかといった地域住民の意識を把握するためのアンケート調査も実施されたことがないとのことで、地域の合意形成過程が担保されているとは言い難い現状です。
 よくよく考えると、慢性的に渋滞している方が車の流れは滞り、車がスムーズに走っているより歩行者にとっての危険は少ないはずです。はたして、通過交通が排除され、長後駅前の踏切の渋滞が緩和されたところで、滝山街道の交通量は減るでしょうか?国道467の抜け道機能は強化されるでしょうから端的には滝山街道の危険性は増すものと思われます。

<幅員15メートルは絶対条件?>
 現在の国の道路構造令に則るため、もともと12メートルで計画されていた幅員を、自転車道を付け足して15メートルとするための都市計画変更に向けた手続きが進められています。しかし、沿道住民の多くの方々は60年前からの12メートル計画に備えた心積もりはあっても、15メートルとなった場合の用地提供については唐突感がぬぐえず、困惑が広がっています。
 道路構造令で決められている道路規格は、交通量の将来推計によるのですが、直近の平成20年の東京都市圏パーソントリップ調査の推計では 高倉下長後線は6100 台で道路区分としては 4 種 2 級となり標準幅員は 15 メートルとなると市当局は説明しています。ただし、この調査は 10 年ごとに行われており、平成 10 年の推計では 13000 台と倍以上の開きがあるのです。仮に次回平成 30 年の調査で 4000 台未満の推計が出れば 4 種 3 級となり、様々な制約条件が変わります。来年にも行われる調査結果を待たずして10年も前の調査結果で都市計画変更を進めるのは拙速ではないでしょうか。
 この都市計画道路の整備が本当に必要なのか?必要だとしたらどのような道路が望ましいのか?今一度、我が街の課題として地域の人々が主体的に考える必要がありますし、地域の合意形成を進めるためにも、市当局には、説明会の開催などで住民の参加を待つのではなく、アンケート調査など、アウトリーチ型の意識調査や情報周知に努めるよう求めています。
 酒井信孝は、長後に住む市議として、地域の皆さまと一緒にこの課題に取り組んで参りますので、忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです。