公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

白旗保育園建て替え問題に見る保育行政の無責任

2019年度に建替えが予定されている白旗保育園の事例を取り上げ、本市の保育行政の抱える問題について9月定例会の一般質問で取り上げました。 

法人立(私立)の白旗保育園において、この春突然、1年後の建替えと、4キロも離れた現あずま保育園舎を仮設園舎とすることが、決定事項として保護者に伝えられました。運営法人は2012年から市当局へ建替えの相談をしていながら、保護者へは一切伝えず、水面下で話を進めていたのです。入園時に建替えの予定が周知されていなければ、災害でもない限り、卒園まで同じ園舎に通えることを大前提として各家庭の日常生活は営まれているに違いありません。突然、生活環境が一変する事態を突き付けられた多くの保護者が不安と混乱の渦に巻き込まれました。本来、保護者を支援することが目的の保育事業の趣旨からして、家庭環境が激変しないように配慮するのは当然のことです。しかし、仮設園舎への送迎方法など、実現可能な具体策がまったく練られておらず、家庭へ負担が生じることを前提とする無責任な説明に終始しました。

その後の保護者有志による行政や運営法人との地道な折衝が功を奏し、現園庭を用いた建替え方法に変更されましたが、約半年間、振り回された保護者の中には、仕事やライフプランの調整を余儀なくされた人も少なくありません。無謀な建替え計画に対する保護者らの声に、市は「法人が責任を持って説明を行い、保護者の合意を得るべきこと」との弁を繰り返すばかりで、法人に丸投げしているかの態度でした。

交通費など年間最大30万円もの負担がありうる、といった保護者からの嘆きの声も聞かれましたが、そうした経済負担も合意が得られれば問題ないと市は答弁しました。入園時の周知があるならまだしも、たまたま在園中に降って湧いたような園舎の建替えによって何十万円もの負担が強いられるなど、公共の平等原則に著しく反します。このような保育行政の下では、保護者は安心して仕事ができません。

児童の保護者を支援することは児童福祉法地方公共団体に課せられた責務です。認可保育園には公立と法人立がありますが、法人立も市の委託事業です。しかし、今回の質疑を通し、藤沢市の保育行政は、法人立と公立とでは大きな違いがあることがわかりました。保護者にとっては、市へ保育を委託しているはずなのに、法人立で問題が生じた場合の解決は法人へ丸投げしている印象です。法人に問題処理能力がなく、責任を果たせず保護者に迷惑が掛かろうと、市は法人の責任だと言うばかりです。

公立であろうと法人立であろうと、市の保育事業であるからには、園児や保護者の権利を守る一義的な責任は市にあるのでなければなりません。公立・法人立に関わらず、安心して子どもを預けることができる保育行政となるよう取り組んで参ります