公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

総合評価入札方式で問われる発注者の倫理

 本日、藤沢市都心部再生・公共施設再整備特別委員会に委員として出席しました。
 労働会館の建て替えは総合評価競争入札を採用していますが、落札業者(鹿島建設)が評価項目「藤沢市に対する貢献度」で提案した本社社員食堂での藤沢産農産物の利用を実施したとの報告がありました。こうした入札案件と関係のない、受注側のサービス(負担)を受け入れ評価するのは、過当競争を誘発するもので、公共工事発注者の倫理として不適切だと思います。
 以下を「意見」として発言しました。
 平成29年度版の藤沢市公共工事等総合評価競争入札試行ガイドラインhttps://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/…/29sougohyoukagaidor…)には、「総合評価競争入札は、標準的な設計施工方法に基づいて最も安い価格で入札した者を落札者としてきた従来の入札方式(価格競争自動落札方式)とは異なり、工事の 施工に必要な優れた技術力を有する者が落札者となりやすく、工事品質の一層の向上や企業の技術開発の促進による技術と経営に優れた健全な建設業の育成が図られる入札方式です。」とあるわけですが、調達や人材確保といった面で市内業者を活用するといった請け負う事業に関連する範囲で市内経済に還元できることを提案いただくならまだしも、今回の本社での農産品のフェア企画といったものは、入札案件とは関係のないものです。発注者という立場の強い側の倫理として、受注者の弱みに付け込むような、過度な要求は自制するべきだと思います。
 本社社員食堂でのフェアで30万円分の藤沢産農産品を利用するといっても、それを企画し実施するためには人件費等、何倍もの経費を要すると思われます。例えそれが社内の研修費等を用いていたとしてもそれは会社の収入から捻出しているわけですから、会社の負担であることに変わりはありません。
 受注のいかんに関わらず従前から行われていること(社会貢献等)や、受注業務に関連して市内業者を活用するという事業の範囲を超え、あえて本市関係各所にメリットを提供するという今回のような提案は過当競争を誘発することになりかねません。また、こうした本来の事業の範囲を超える提案内容が入札額の積算に反映しているとすれば、その分、価格が吊り上がっているか、質が落ちているか、会社側に負担を強いているかのいずれかでしょう。
 総合評価競争入札地方自治法施行令に規定された方法であることは確かですが、発注事業の範囲を超えた提案を評価に入れることに地方自治法上の違法性はないのか、こうした発注者の立場を利用して受注者に負担を強いるようなことは発注者のモラルとして問題ではないのか、分庁舎の入札も含め、今後の総合評価競争入札の在り方を検証し、最小経費で最大効果を挙げる公共事業を追及していただけますよう要望します。