公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

子宮頸がんワクチン論

藤沢市議会では2017年6月定例会で、「子宮頸がん予防ワクチンの定期接種の中止と検診体制の刷新、接種者全数健康調査を求める意見書について」との意見書を21:14で採択しています。

議決結果(右欄2項目)
http://shigikai.city.fujisawa.kanagawa.jp/voices/gikaidoc/attach/koho/KhB237_No226_8p.pdf

厚生環境常任委員会審査議事録
https://drive.google.com/open?id=10YppZQhE0tAn6gLpXfnijX9RE8wAmmSp

 私は、本会議採決において、以下の意見を述べた上で反対しましたが、感情論に流される議員が多く、情けない限りです。その後改選があり、私は落選してしまいましたが、現職議員らがどのような考えであるのか。今のところ、藤沢市民を代表する議会の立場は定期接種中止を求めるものとなったままです。

(本会議議事録より抜粋)


 議会議案第2号子宮頸がん予防ワクチンの定期接種の中止と検診体制の刷新、接種者全数健康調査を求める意見書についての市民派クラブの討論を行います。
 子宮頸がんは、原因がはっきりしており、予防が可能との触れ込みも流布されていますが、それは少し過大評価にすぎると思います。子宮頸がんのほぼ100%がヒトパピローマウイルスに感染しているとされていますが、ヒトパピローマウイルスは約100種類あり、そのうちハイリスクに分類されるものは15種類で、そのうち定期接種となっている予防ワクチンの効果があるのは16型と18型のみで、子宮頸がんでその2つのいずれかに感染している割合は50%から70%とのことです。16型と18型に対する予防効果は90%以上であるとされているようですが、全ての子宮頸がんが予防できるわけではないのです。
 しかし、16型と18型に感染予防効果が本当にあるとすると、これまでに予防接種を受けた約338万人のうち、約1万5,000人から2万1,000人ほどの人の子宮頸がんを予防できたこととなります。
 一方で、副反応疑いの報告が約3,000件あり、他の予防ワクチンに比べると副反応発生率は比較的高く、減らす努力は必須ですが、副反応リスクのないワクチンはなく、あらゆる科学技術にリスクは伴うのであって、科学技術を過信せず、真摯にリスクに向き合わなくてはなりません。現在の予防接種法においては、以前は定期接種は義務だったのが努力義務となっており、強制されるものではありません。任意接種となったとしても、他の予防ワクチンで全額公費負担とする自治体の助成制度は幾らでも例がありますが、定期接種であれば、住んでいる自治体によらず、全国民に一律に機会が与えられるという点で意味があります。
 藤沢市でも、年間約1万人の対象者のうち、接種しているのが約30人程度だとのことですので、任意接種になった場合は助成制度を創設することは難しいかと思います。現在の接種人口からすると、蔓延防止効果はないに等しく、行政にとっては公衆衛生の目的は失われておりますが、接種を希望する個人の立場に立てば、現状では費用の自己負担がなく、いざというときの公的な健康被害救済制度が充実している分、安心して接種できる状況にあります。副反応の解明や治療体制の確立は急務ですが、あえてこの段階で定期接種を中止することには反対ですので、これを求める本意見書の採択には反対します。