公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

津波防災の混乱と矛盾 “津波避難ビル”

 基本設計が大詰めを迎えている辻堂市民センターの再整備事業では様々な疑義が表出しています。昨年の藤沢市議会9月定例会では移転先予定地の周辺住民を欺いたアンケートについて取り上げましたが、昨年12月定例会では同施設再整備の重要コンセプトの一つ、防災機能について、福祉避難所及び津波避難ビルの位置付けの矛盾について取り上げました。


想定浸水域外の避難ビル指定により生じているリスク
 藤沢市は平成24年に津波避難ビルに関する要綱を策定し、JR東海道線線路以南を津波避難ビルの指定区域としています。しかし、指定した215施設のうち101施設は、平成27年3月に神奈川県が想定外をなくすと意気込み、数千年に一度の巨大地震まで踏まえて策定し直した津波浸水予測ですら、浸水域外にあるのです。そのため、大地震発生時、通常は火災や倒壊のリスクから逃れるために屋外へ避難するべきところ、辻堂駅周辺などは全く津波浸水が想定されていないのに、津波避難ビルのプレートを見た人々がビル上層に殺到するリスクを生じています。

不合理なスロープ設置
 藤沢市津波避難ビルの要件は、3階以上に避難スペースがあることとしているため、津波浸水想定域外であっても津波避難ビルへの避難は一律に3階以上にある避難スペースへの避難となっています。津波避難ビル指定区域であるため、新センターは津波避難ビルに指定される予定です。2階3階に避難スペースを設け、福祉避難所でもあることから2階へのスロープも設置予定ですが、実のところ、県の浸水予測では敷地は浸水域外なのです。
 そもそも辻堂地域は「津波防災地域づくりに関する法律」に基づく津波災害警戒区域でもありません。警戒区域であったとしても、指定避難施設の要件は津波浸水想定水位以上の場所に避難場所があることなので、予定地では1階への避難で十分です。要配慮者の避難誘導としても、優先的に一階へ誘導する方がよほど合理的です。床面積を制約するスロープの設置は本当に必要なのでしょうか?

行政主導が生む独善 
 他にも合理的な説明の付かない点が多々あります。衆知を集めない行政主導の弊害と言わざるを得ません。説明責任を果たせる再整備事業となるよう、今後も追及して参ります。