公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

市民を裏切る新庁舎防火管理義務違反!


3月5日の本会議における私の代表質問で、2018年の14日にオープンした藤沢市の新庁舎が供用開始から2カ月以上、消防法の防火管理義務を履行していないことが判明しました。たとえ消防法を知らずとも、新施設をオープンするに際して、利用者の安全を期するのは施設管理者の最優先責務であることは自明の理です。まさかとは思いながら「消防計画などの危機管理体制が整備されているのか」と念のために問うたのでした。

市は「建物における消防計画につきましては、消防法により建物の供用開始後に作成し、消防署へ提出することとなっております。本庁舎における消防計画につきましては、これまでの消防計画を準用しつつ、本庁舎供用開始後における実際の人の動きと消防設備及び避難経路等を鑑み、本庁舎機能にあった消防計画を関係課との調整を図りながら、現在、作成しているところでございます。」(財務部長)と答弁しました。

本会議の質疑は基本的に答弁調整をしています。事前の協議で「こんな答弁では市に対する市民の信頼が損なわれる。失態を認め、早急な対応を答弁するべきではないのか。」とさんざん忠告したにも関わらず、これが市の考えだ、と市当局は押し切ったのでした。その数日後、防火管理者の未届けも発覚しました。

市庁舎のような多数の利用者が出入する防火対象物の管理権原者(市長)には供用開始時点で防火管理の義務があり、防火管理者を定めた上で消防計画を作成すること(消防法8条1項)、防火管理者を定めたときは遅滞なく消防署に届け出ること(同条2項)となっています。供用開始前に防火管理義務を履行するよう指導命令するのは消防局の職務です(同条3項4項)。藤沢市消防局の職務怠慢以上に、消防局を監督する立場の市長をトップとする市役所の本庁舎が反面教師になるなどとは驚愕すべき由々しき事態です。市民に対する背信行為以外の何物でもありません。

この件は3月9日付けで新聞報道(朝日新聞朝刊湘南版29面)され、その後、届け出はなされましたが、市の不適切な答弁は消防局の今後の指導業務を妨げる恐れがあり、答弁を修正・撤回するよう要請しました。議会最終日の3月20日本会議冒頭、5日の財務部長答弁のマーカー部分を「消防法には期間について特段の明記がないことから」との理由を付して市は答弁を撤回しました。しかし、期間の明記がないのは「供用時には消防計画ができているのが法の趣旨」(総務省消防庁)が自明であるからで、さらに、同規模の公共施設が藤沢市には歴史上存在しないのに、「これまでの消防計画を準用しつつ」で通用するわけがありません。こうした市の失態について、市民に対する釈明や謝罪はなされていません。
 年間約2500億円を執行し、3000人以上の職員で公共を担う大組織である藤沢市役所にあって、もっとも多くの市民が利用する建物の、安全管理上の義務が果たされておらず、命に関わる第一義的に備えていなくてはならない当たり前過ぎることが抜け落ちていたのです。誰かの勘違いや思い過ごしは互いに補い合うという自律性を有していない、組織としての機能不全に陥っているということが危惧され、愕然とする思いがします。なぜこうした事態が生じたのかといった市役所の体質上の問題を検証し改善するよう求めて参ります。