公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

感情論への反論~子宮頸がんワクチンをめぐって~

NHKおはよう日本が『若年層に増える「子宮けいがん」。予防するワクチンの存在を知らない実態。リスクを伝え、接種の判断へ。現場の取り組み』と取り上げていました。2年前に藤沢市議会で採択された意見書への反対討論を改めてご紹介しておきます。

 議会議案第2号子宮頸がん予防ワクチンの提起接種の中止と健診体制の刷新、接種者全数健康調査を求める意見書についての市民派クラブの討論を行います。 (2017年6月定例会)
 子宮頸癌は原因がはっきりしており、予防が可能、との振れ込みも流布されていますが、それは少し過大評価に過ぎると思います。子宮頸がんのほぼ 100%がヒトパピローマウイルスに感染しているとされていますが、ヒトパピローマウイルスは約100種類あり、そのうちハイリスクに分類されるものは15種類で、そのうち定期接種となっている予防ワクチンの効果があるのは 16 型と 18 型のみで、子宮頸がんでその 2 ついずれかに感染している割合は 50%から 70%とのことです。16 型と 18 型に対する予防効果は 90%以上であるとされているようですが、全ての子宮頸がんが予防できるわけではないのです。
 しかし、16 型と 18 型に感染予防効果が本当にあるとすると、これまでに予防接種を受けた約 338 万人の内、約 1 万 5 千人~2 万 1 千人ほどの人の子宮頸がんを予防できたこととなります。
 一方で副反応疑いの報告が約 3000 件あり、他の予防ワクチンに比べると副反応発生率は比較的高く、減らす努力は必須ですが、副反応リスクのないワクチンはなく、あらゆる科学技術にリスクは伴うのであって、科学・技術を過信せず、真摯にリスクに向き合わなくてはなりません。
 現在の予防接種法においては、以前は定期接種は義務だったのが努力義務となっており強制されるものではありません。任意接種となったとしても、他の予防ワクチンで全額公費負担とする自治体の助成制度はいくらでも例がありますが、定期接種であれば住んでいる自治体によらず全国民に一律に機会が与えられるという点で意味があります。藤沢市でも、年間、約 1 万人の対象者の内、接種しているのが約 30 人程度だとのことですので、任意接種になった場合、助成制度を創設することは難しいかと思います。
 現在の接種人口からするとまん延防止効果はないに等しく、行政にとっては公衆衛生の目的は失われていますが、接種を希望する個人の立場に立てば、現状では費用の自己負担がなく、いざという時の公的な健康被害救済制度が充実している分、安心して接種できる状況にあります。
 副反応の解明や治療体制の確立は急務ですが、あえてこの段階で定期接種を中止することには反対ですので、これを求める本意見書の採択には反対します。

追記
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/cervix/what/
こちらの情報によりますと、一生の内に74人に1人が子宮頸がんと診断されるとのことです。その内ワクチンの効果がある16型と18型いずれかの割合は50%から70%で、予防効果があるのは90%だとすると、予防接種を受けた338万人の内、20,554人から28,775人の予防ができたという計算になります。一方、こちらにあるように
http://www.yamanashi-obgy.org/kay_kenshin/index.php...
20歳台の罹患率が30%だとすると、456,300人から638,820人の予防効果との見方もできますね。