公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

2018年2月定例会総括討論


 議案第120号平成30年度一般会計予算ほか 16議案に対する市民派クラブの討論を行います。議案第120号及び第92号には反対し、その他に関しては賛成します。

職員給与
 議案第92号に含まれる「藤沢市職員の退職手当に関する条例の一部改正」は国家公務員の改定に倣って官民格差を是正するために退職手当の支給水準を来年度から引き下げるというものですが、国家公務員の改正退職手当法の施行は平成30年1月1日です。先日可決した給料表及び初任給調整手当を引き上げる改定は平成29年4月1日、平成29年度の期末・勤勉手当を引き上げる改定は平成29年12月1日に遡って実施するという国家公務員と歩調を合わせるものでした。いずれも国家公務員に倣うという主体性のない給与のあり方は見直すべきだと思うとともに、とりわけ引き上げは遡り、引き下げは年度をまたいで先延ばすというダブルスタンダードでは市政の出資者たる市民の理解は得られないと思うので反対します。

 以下、代表質問で取り上げたことを中心に、議案第120号平成30年度一般会計予算において抜けている観点を指摘し反対の討論とします。

財政健全化手法
 平成30年度一般会計予算案の編成にあたり、2年前に公表した中期財政フレームで毎年生じうる収支乖離を解消するために部局別枠配分方式の採用やBPRを実施して予算収支の均衡を図る努力をしているとは言いながら、事業を廃止したり事業の在り方を見直すことで、市政の無駄を廃し、効率化や同じ予算で質的向上を図れた、といった実質的な予算縮減の成果が見られません。代表質問で取り上げた庁舎総合管理業務委託の中に計上されている「本庁舎9階フロアの「お湯出し等業務」」こそは、まず最初に見直されるべき、なくしてもいい業務の典型です。こうした見過ごされている無駄がいくらでもあるように思われます。削ることのできない事業を先送りして凌(しの)いだだけであれば、その負担は蓄積するばかりです。BPRの手法としても、当該部局内で片手間にやっているのでは自ずと限界があります。様々な分野の横断的な合同チームで行ったり、外部の機関に委託するなどするべきです。強力かつ実績のある有力な業務改善手法としてバリューエンジニアリングの導入を強くお勧めします。

審議会の質
 また、衆知を集めることのできる審議会等はもっと有効活用するべきです。年間約1億円あまりが計上されていることがわかりましたが、それを活かしきれているかは疑問です。費用対効果が上がるようにPDCAサイクルをしっかりと回し、審議会等の質を高めるよう努めてください。

藤沢型総合評価入札方式の問題点
 現在建設のただ中にある労働会館等建設工事で採用された総合評価入札方式で、「市内経済活性化に関する提案」や「市に対する理解力のある提案」といった評価項目が設定され、本社食堂での藤沢産フェアといった発注事業自体に直接関係のない提案内容が評価されて契約に含んでいるのは、その提案内容も買っているということであり、地方自治法第2条の14項「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」という地方自治の原則に反するのではないかと問題提起しました。しかしこれが違法にならないからくりは、代表質問で確認できましたが、市の入札ガイドラインでは市内経済活性化に関する提案は違約金の適用除外となっていることから、どの程度実施し効果を挙げるのかは事業者側の裁量となっており、契約内容として費用が計上されていないということのようです。このような実施義務のない目眩(めくら)ましな提案を評価し、経済効果を期待させることは不適切だと思います。工夫の余地のない簡易型としていたために入札後の学識経験者によるチェックがなされていませんが、本来は入札後の評価の妥当性を諮問する2回目の学識経験者による意見聴取をするべき案件なのだと思います。今後、総合評価入札方式をより有効に活用していくためにも、他市の事例なども踏まえて検証することを要望します。

新庁舎防火義務違反
 Jアラートが発出されるといった有事以前の、日常に関わる基本的な安全管理として、新庁舎の消防計画についても取り上げました。消防法を知らずとも、利用者の安全を確保するのは施設管理者の責務であることは自明です。安全確保のためになすべきことは、当然、消防局を擁する指導的立場にあり模範とならなければならない市当局は知っていなければならないし、市役所には様々な分野の担当者が協働しているのですから、誰かの勘違いや思い過ごしは補う一定の自律性を有しているのでなければ、組織としての機能不全に陥っているということではないでしょうか。まして、本庁舎という市政の本体、もっとも市民の多くが利用する建物の、安全管理上の義務が果たされていないというのは、市民に対する背信行為です。
 代表質問によって、新庁舎の供用開始から2か月以上、防火管理者を届けていなかったばかりか、防火管理の義務である消防計画を策定しないままに新庁舎を供用していたことが発覚しました。このことは9日付で新聞報道されました。8日付で防火管理者の届けがなされ、先週消防計画も提出したとのことですが、「日常業務を優先させた結果」だとの市幹部の発言も掲載されており、安全に対する意識の低さに愕然としました。
 消防法には、市庁舎のような多数の人が出入する防火対象物の管理者には防火管理の義務が明記され、防火管理者を定めた上で消防計画を作成しなければなりません。防火管理者を定めたときは、遅滞なく消防署長に届け出なければならないともあります。供用開始前に防火管理義務を履行するよう指導命令するのは消防局の職務です。藤沢市消防局は、昨年度、資格取得が必要な防火管理者の指定を滞りなくするよう指導はしたものの、新庁舎が供用開始されて以降も届けられていない認識がなかったとのことです。
 なぜ不特定多数の市民を迎える本庁舎の安全管理上の基本中の基本が欠落している事態が生じたのかといった市役所の体質上の問題を検証し改善を図るべきです。

津波避難ビル要件の不合理
 津波防災の在り方に関しても質問しました。本市の津波避難ビルの指定要件は、合理性を欠く基準が多々あります。指定の対象地域を浸水想定地域が含まれる町字単位の地域までと見直すことは合理的ですが、藤沢市が参考にしている廃止された国のガイドラインでは「想定される浸水深が1メートル以下の場合は2階建てでも可」となっているのに、避難スペースを一律3階以上としていることに合理的な理由は見いだせず、なぜ見直さないのか理解に苦しみます。そしてそれを現在設計途中の辻堂市民センター等の再整備にも適用し、想定される最大の津波でさえ浸水域ではない建物であるのに、2階や3階に避難スペースを設け、スロープまで設置するというのは、まったくに合理性に欠けます。巨大地震の場合は、建物火災のリスクもあります。合理的かつ効果的な防災まちづくりとなるよう、改めて津波避難ビルの在り方を見直すよう要望します。

行政の不作為
 横須賀水道道に関する藤沢市の管理責任についても取り上げました。横須賀市との間で「水道用地使用許可条件」を取り交わし、平成5年に無断で市道認定までしているにもかかわらず、それ以前から横須賀市が水道管を守るために設置していた車止めが少なくとも2014年時点ですでに破壊されているのにそれを直すことをせず、一年前から行われている善行6丁目の開発行為に伴い事業者が水道用地使用許可条件に違反して大型車両を通行させていることを地域住民や横須賀市から指摘されてもなお放置したことによって埋設管の損傷が危惧されています。横須賀市からは管の状態を確認するための調査費用の負担を求められています。横須賀市にとっては約3割の市民の飲み水が危険にさらされており切実です。藤沢市が譲り受けて利用している下水管も埋設されています。これまでの道路管理がずさんであったことの責任を認め、藤沢市として調査を実施するのか、明らかに違反のあった事業者に負担を求めるのか、道路管理者としての責任を果たし、信頼回復に努めるよう求めます。

文書事務の適正化
 最後に、こうした利害関係者との協議記録でさえ、昨年4月の公文書条例施行以降も履行されていないことが明らかとなりました。第3条第1項「職員は、経緯も含めた意思決定に至る過程及び事務事業の実績を合理的に跡付け、検証できるよう、行政文書を作成するものとする。」という健全な行政の根幹を徹底するよう要望し、市民派クラブの討論を終わります。