公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

収支乖離の誤解

 2016年に出された中期財政フレームが、本市の財政が厳しくなりつつある、との印象に拍車を掛けていることは明らかです。  
 朝日新聞湘南版2017年9月5日の記事には「市は昨秋、今まで通りの財政運営を続けていけば、一般財源が17年度から21年までの5年間で計545億円足りなくなるとの試算を公表、本格的な行財政改革に乗り出した。」との一文があります。しかし、これが誤解であることがだんだんに分かってきました。すなわち、実際には、毎年の予算編成で収支の乖離は解消しているのに、毎年の収支乖離を積み上げて見せたことで、あたかも5年後に545億円の収支乖離が生じるかの誤解を与えているのです。   
 平均的には毎年概算要求時点では100憶円くらいの収支乖離があり、そこから収支の均衡が図れるように調整して予算は組み上がっているのです。  
 少子高齢化による税収の減少、社会保障関係費の増加、公共施設の老朽化による建て替えなど、義務的な財政需要の増加で、政策的経費が圧迫されているのは明らかですが、しかし政策的経費はあくまで非義務的経費です。政策的経費が減っていることで財政のゆとり・余裕がなくなっているわけではありますが、それは贅沢な部分とも言えます。すなわち贅沢ができないから「財政が厳しい」と言っているようなもので、感覚が麻痺している、という感が否めません。  
 そして、余裕があるから、財政の縮減に本気で取り組んでこなかった、放漫財政になっている、と思えてなりません。  
 例えば、億単位の公共事業でバリューエンジニアリング(VE)を導入することで10パーセント以上の縮減実績が多くの自治体であるにも関わらず、藤沢市では一切取り入れていません。国交大学校などが実施しているVE研修を受けた職員もいません。こうした行財政のバリューアップの専門的ノウハウを持った職員がおらず、闇雲な、意欲だけ、見かけだけの行財政改革に過ぎないのです。  
 各課一人ずつでも毎年VE研修を受け、業務に活かすようにするべきではないかと提言しています。 

VE導入の効果事例 https://www.sjve.org/category/introduction-case 
国交省の設計VEガイドラインhttp://www.nilim.go.jp/lab/peg/sve_guide.htm