公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

国立第二小学校改築事業の階層スロープ設置の見直し及び設計VEの導入を求める陳情審査

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根拠に基づかない自分らに都合よく装った欺瞞に満ちた上辺の議論ばかり。
根拠も示さず「やっています」だとか「あります」と言ったところで、その根拠がないから問題としているのである。
そうした口先だけの言い訳を鵜呑みにして何の追及もしないのだから、正直者が馬鹿を見る。
議員らの議員としての能力(調査力、追及力、問題発見力、問題分析力、問題解決力等)が無さすぎる。
<陳情書>
<陳情趣旨説明>
 陳情者の酒井信孝です。
  国立第二小学校校舎改築事業は実施設計が終了し、この定例会に工事の契約議案が上程されていますので、このまま工事に入ってしまえば後戻りできなくなるため、一旦立ち止まり、実施設計に不備があるのかどうかを第三者の専門家を入れて点検する必要があるとの思いから、陳情する次第です。
 とりわけ、設計変更がなされた階を跨ぐ巨大なスロープは、目的に適った設計となっているとは思えません。誤解がないように強調しておきたいのですが、私は一般的なスロープの有用性を否定しているわけではなく、この実施設計の瑕疵を問題としています。
 この事業の問い合わせ窓口となっている教育施設担当は、あくまでこのスロープの第一義的な目的はフルインクルーシブ教育のためである、と強弁します。一方で、昨年8月31日の本会議では、教育長が「すごく言葉として先行してしまっている」ので「国立におけるフルインクルーシブって何なんだろうというのを」「具体化、客観化できるようなものが必要だろうということで教育委員会としては検討していきたいと思っている」と答弁していることからしても、言葉が先行して具体化していないのであれば必要な機能が定まるはずもないのに、どうしてそのために必要な設備を設計に落とし込むことができるのでしょうか?
 現在の実施設計には階段もエレベーターもあります。エレベーターとスロープは誰もが利用できますが、階段は車椅子利用者は利用できないわけですから、本当にインクルーシブ教育に重きを置いた校舎を作るのであれば、階段はない方がいいかもしれません。実施設計のスロープは、後から無理やり継ぎ足したために、水平方向への移動が活かされておらず、スロープの有効性が半減しているようにも思われます。
 また、緊急に避難しなければならない火災発生時には、吹き抜け構造であるスロープは防火スクリーンシャッターによって竪穴区画となるため、参考とされているメーカーに確認したところ、車椅子利用者は想定されておらず、シャッター下部の危害防止装置のバーが障がいとなるため自力で入ることは無理だろうとのことです。とりわけ手も不自由な電動車椅子利用者であればスクリーンを自力で持ち上げることも困難です。避難用のスロープの位置づけであれば屋外スロープの方が有効かもしれません。
 降下型避難機器は屋外にあるため有効ですが、オーダーメイドな電動車椅子には対応していないものもあるそうです。
 そもそも、当事者団体からの要望が契機となって設計変更するに至った、と市当局は説明していますが、これらの聞き取りを教育長や教育次長、教育施設担当と建築営繕課だけで行っており、十分に理解できていたのか疑われます。なぜ日々当事者に向き合っている障がい者支援課等が加わらなかったのか?庁内連携にも問題があるように思われるし、当事者団体からの要望を受けたとしても、担当課との間だけで協議を進めて決めてしまうからいろいろなことを見落としてしまうのです。マスタープランを策定した連絡協議会に関係部局や当事者団体の代表等を加えたインクルージョンな協議体で検討し直すくらいのことが必要だったのではないでしょうか?それを怠ったがために設計行為全体の整合性が崩れ、合理的な説明ができなくなっているのだと思います。
 さまざまに比較検討して、費用対効果も考え、行き着いたのが現行案であるのなら説明が付くはずですが、そうした検討の記録は出てこないし、説得力のある説明を聞くこともできません。インクルーシブ教育は推進するべきですが、具体的にどのような体制で、どのような教育を行い、そのために必要な学校施設はどうあるべきなのか、といった議論が欠落しています。
 そこで、欠けている比較検討を補い、見落としている問題を洗い出し、説明責任を果たせる事業とするためにも設計VEの導入を提案します。
 VEとはバリューエンジニアリングの略で、費用対効果を最大化するために検証・検討・提案する専門的な手法です。ここでいう価値とは機能とコストの関係のことで、同じコストで高い機能が得られれば価値が向上したと捉えることができます。
 1990年代から国交省公共工事への導入を推奨しており、全国各地の自治体でも導入されており、多くの実績が報告されています。東京都でもガイドラインが策定されています。
 VEは関係者を集めたチームによるワークショップが特徴で、原案を検証した後、問題や改善案が見いだされれば代替案を提案し、発注者側の審査会で採否を決めます。来年度予算で配置されることとなっているフルインクルーシブ教育推進アドバイザーの方にも是非加わっていただくといいのではないでしょうか。
 導入の仕方は様々あると思いますが、工事に入る前に、実施設計の妥当性を検証し最適化するために設計VEを導入すること、必要な機能を満たすために、とりわけ階層スロープの必要性を再検証するとともに、エレベーターや降下型避難機器の数や配置なども含めて比較検討を十分に行い、説明責任を果たせる事業とするよう、国立市当局へ要請してください。