公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

職種間差別が生む当事者意識の欠如

 命に係わるリスクを冒してまで経済を優先するなどというのは血迷っている。
 しかし、いざ命の危機にさらされれば医療に縋るしかないのに、そうした医療体制を維持してくれている現場の医療関係者の悲鳴が世間に響かない不幸は、日頃から医者は特権階級と見做され、羨まれ、嫉妬されているからではなかろうか。
 尊い仕事でもあるし、危険な面もあるが、その分高給を得ていい思いもしている。そうした特権階級が大変な思いをしていているのは、世間一般からすれば遠い世界の他人事。日頃いい思いをしているのだから、こういう時に頑張るのは当然、とでもいうような感覚で、遠目に見ている人が多いのではなかろうか。
 そもそも、医者は、命に係わる尊い仕事であるにもかかわらず、本心からは尊敬されていないように思われる。
 医療従事者間の格差もその一因だろう。病院という一つのシステムをチームで運営しているのに、職種間の待遇格差は著しい。
 コロナ対応で疲弊した医療従事者(医師以外)の賞与のためにクラウドファンディングを募っている病院が話題となっているが、同病院の医師の年収モデルは40才(経験15年)で1700万円以上、看護師は経験15年で約530万円 。他の職種に至っては、時給900円~1000円の介護員もいる。確かに、医師職に比して他職種の低賃金は職責に見合っているとは思えない。
 コロナ禍で疲弊している医療従事者(医師職は年俸制で賞与の対象ではない)に賞与を支給できるように寄付をお願いしたい、と病院経営者自体が募っているわけだが、世間一般から募る前に、厚遇されている医師職が身を削って他職種の同僚を労うくらいのことはしているのだろうか?
 コロナ対応に掛かる経費や赤字経営を補うために寄付を募るのであれば理解できるが、職場内待遇格差を棚に上げ、厚遇されている医師職が、他職種の賞与のために寄付を募るというのでは、なかなか世間の理解は得られないように思われる。