公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

NPO幼児教育施設

 『幼児教育施設』とは幼稚園に準ずる認可外の幼児教育や保育を⽬的とした施設のことです。英才教育などの特殊な幼児教育を⾏う施設がある⼀⽅、営利を⽬的としないNPO法⼈が運営する『幼児教室』があります。これらは、⾼度経済成⻑の只中にあった1960年代、郊外に団地が次々とできて幼稚園不⾜が深刻となる中、「我が⼦に豊かな幼児期の育ちを」と願う親同⼠で⽴ち上げたのが始まりだそうです。
 これら地域の要請に応えて市⺠の⼿によって⽴ち上げられた幼児教室は、保護者の運営協⼒や、⼦育て相談を重視し、あえて預かり時間を短くしているため、運営形態は幼稚園に近いですが、団地の集会室などを借りて運営しているために専⽤の園庭がないなど幼稚園設置基準を満たすことができず認可を受けることができません。しかし、園庭はなくとも、団地の広場を優先的に使うことができるなど、むしろ恵まれた保育環境であったりもします。
 ⼀⽅、認可幼稚園でないことから、認可幼稚園の運営予算の⼤部分を占める私学助成がありません。藤沢市では、他市では認可外の幼児教育施設は補助対象外となっている幼稚園等就園奨励費や幼児教育振興助成費なども対象となっているだけ恵まれていますが、それらは運営費に充てることができないため園児からの利⽤料で全ての運営費がまかなわれています。そうした構造的問題ゆえに、慢性的に苦しい経営を余儀なくされています。それでも、誰もが利⽤できるよう利⽤料を上げるわけにもいかず、削れるところといえば⼈件費ということで、保育経験20年以上のベテラン職員が平均的な幼稚園の初任給程度や
それ以下の時給で働いています。サービス残業が常態化しており、スタッフの労働条件に責任を持つこともできず、若い世代へ引き継いでいくこともままならない現状です。
 現在でも存続している4園からなる藤沢市幼児教育協議会は、20年以上前から毎年、
市当局に対して公的⽀援を求めて要望書を出してきました。具体的なこととして現⾏の幼
稚園等就園奨励費補助⾦や幼児教育振興助成費補助⾦の増額要望をしてきたわけですが、
構造的財政難は改善されることはありませんでした。市当局としても、これまで財政に関わる具体的な相談が協議会からの要望にはなかったため、そうした困難を抱えているというほどの認識ではなかったようです。今後は「さらなる⽀援に関しましては、幼児教育施設は、幼稚園と異なり、県が⾏う私学助成の対象外となっているため、県に対しまして私学助成の範囲拡⼤を要望していくとともに、市としましては、施設が抱える運営的な課題などの解決に向けた相談⽀援を⾏ってまいりたいと考えております。」との答弁がありました。
 幼児教室は半世紀近くにわたって地域に根付き、⾼齢化著しい団地にとっても⼦どもが
育つ場があるということがコミュニティをイキイキとさせる重要な存在となっています。
こうした公共的な市⺠の⾃助努⼒によって維持されてきた⼦育ての和が断ち切れること
のないよう応援して参りたい所存です。