公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

藤沢市職員給与引き上げ議案に反対!

 議案第91号「藤沢市一般職員の給与に関する条例等の一部改正について」市民派クラブの討論をします。
 本議案は平成29年度の人事院勧告に倣って職員給与を引き上げるのと、通勤における自転車利用を促進するための政策的加算の増額とが混在した条例改正となっています。

(元の藤沢市一般職員の給与に関する条例はこちら)  
 自転車加算(同条例9条「通勤手当」を参照)については、現在加算されている職員の勤務地はほとんどが本庁舎以外であるということと、駐輪場をどうしているのか把握していないとのことでしたが、勤務先の敷地内に駐輪しているのでなければ、通常は近隣の駐輪場と契約しなくてはならないでしょうから、通勤距離5キロ以内の2000円プラス自転車加算程度であれば大したインセンティブにはなりそうにありませんが、5キロ以上10キロ未満であれば4200円プラス自転車加算であるので、必要経費を差し引いて2000円程度の報酬となります。自転車以外の手段で通勤している職員には必要経費、もしくはそれ以下しか払われていないので、もともと自転車通勤は優遇されているのかと思います。さらに自転車加算を数百円程度することにどれほどの効果があるのかはわかりませんし、環境や職員自らの健康のためになることをするのに、金銭のインセンティブがなければ促進されないというのは、市民に対して様々な施策をするにあたって示しがつかないように思います。数百円であっても総額では何十万円もの歳出となります。むしろ、自らの健康のためや、財政負担を少しでも軽減させるために通勤手当を減らすべく、自転車通勤を選択する職員が増えるよう啓発してはいかがでしょうか?
 また、国家公務員の給与に関する人事院勧告にならって本市一般職員等の給与を引き上げるのは、一方で、本市の財政状況に鑑み、今後の健全財政を維持していくために、市長等常勤特別職職員の給料について、削減措置を講じる」とすることと相反するものです。人事院勧告は、国家公務員について、事業所規模50人以上の全国の民間事業所とのラスパイレス比較によって給与の改定を勧告しています。事業所規模50人以上の全国の民間事業所は全体の約1%、従業員数は全体の約4割です。国税庁が毎年公表している「民間給与の実態調査結果 」(16ページ参照)を見てもわかるように、事業所規模によって年収には大きな差があります。(ちなみに平成28年の調査結果では、従事員 10 人未満の事業所と従事員 5,000 人以上の事業所とでは一年間の平均給与に約170万円の開きがあります。)
 事業所の規模で言えば従事員数千人規模なのかもしれませんが、業務内容や待遇は民間とも国家公務員とも大きく異なります。人事院勧告を市の職員給与の増減の参考にするのは合理的かもしれませんが、額を国家公務員に合わせることに合理的な理由があるようには思えません。
 平成29年4月1日時点で、藤沢市ラスパイレス指数は101.9で、政令指定都市中核市を除く市町村全1673団体のうち46位タイで、地方公務員が部長等の幹部を含み、国家公務員が本省次長以上の幹部職員や専門スタッフ職を除いているものの、藤沢市の職員給与は国家公務員とほぼ同程度です。
 来年度の予算編成にしても、歳入見込みを超過した7億円もを財政調整基金を切り崩してやりくりしている最中、一般職員も給与を引き下げるのならともかく、引き上げるということには賛成できませんので、議案第91号には反対します。