公共政策の倫理学(旧地方自治の倫理学)

元藤沢市議酒井信孝のブログです。

陳情趣旨説明(国立市選管の不適切開票事務)

国立市議会総務文教委員会にて、国立市選管の不適切開票事務の徹底解明・再発防止を求める陳情の審査がありました。

youtu.be

委員の方々には真摯にご対応いただきましたが、市当局の答弁でより深刻さが増したこともあり、委員会の継続審査として更に追及していくことになりました。

 

以下が私の趣旨説明全文です。

 議員の皆さんも、市長も、選挙で選ばれてここにおられるわけですが、選挙は間接民主制の根幹です。選挙の信頼がなければ成り立ちません。だからこそ、それなりの予算を掛け、人も時間も労しているわけですから、厳正に執行されているものと誰もが信じています。非効率的で不経済に見える古典的でアナログな手続きも、長年にわたり培われてきた、歴史に裏打ちされた一つ一つに意味があるはずです。新しい技術を導入したり、時代に即して変えたり改良することも必要ですが、当然のことながら、選挙の信頼を失うようなことがあってはなりません。

 投票箱は、投票所では投票立会人等複数人の監視下にありますが、投票所で投票箱が施錠された後、期日前投票所であれば翌日開錠するまで、投開票日であれば開票所で開錠するまで、その間、投票箱が不正に開閉されていないことが証明できなければなりません。そのための手法は自治体によって多少の違いはありますが、国立市の選挙執行規程は、少し大まかではありますが、それなりに定められてはいます。陳情書の冒頭に抜粋を載せておきましたが、私が本年7月にあった参議院選挙の開票作業を参観した時、これらの規定はことごとく実行されていませんでした。

 開票所に搬入された投票箱のほとんどは、鍵は各別ではなく紐で連結して一つの封筒に入れ、封をしていないのが大半でした。封緘印はほぼ皆無で、封筒の表面には保管者の氏名の記載もありませんでした。運んできたスタッフが鍵を裸で開票所スタッフに受け渡しているケースもありました。そもそも封すらしていないので当然ですが、鍵の封印の異状の有無の検査は一切していませんでした。開票所への搬入作業の一切に、開票立ち合い人を立ち会わせていませんでした。

 しかし、現場を指揮していた選管職員Aは、搬入作業が始まる前の会話の中で、「投票箱の鍵は、投票所で立会人立会のもと封をして、ハンコを押して、投票箱と一緒に持ってきて開票所で受け取ることになっている」と概略を説明してくれました。にもかかわらず、まったくそれが実行されていない状況を前にして、見て見ぬふりなのか、規程は建前に過ぎないことが常態化しているのか、何のチェックもしていませんでした。

 すべての搬入が終わった後、選挙管理委員長、事務局長、職員Aと一緒に集められた封筒を確認しましたが、封緘印を押していた事例は見当たらず、封をしていないものがほとんどでした。

 11月15日に事務局長を訪ねたところ「直近の都議選まではちゃんとやっていたと思う。それまで指導的立場にあったベテラン職員が病気でいなくなったため、行き違いが生じてしまった。」と話していましたが、都選管に簡易な報告文書を提出しただけで、委員会の会議の議題にもなっていませんし、市長や議会への報告もしていないことがわかりました。

 都選管への報告文書に書かれていたことは陳情書の2ページの下段に載せておきましたが、事務局長の話や報告文書を読む限り、実態を把握できていないばかりか、問題の深刻さを理解できていないのかもしれません。

 「封印されていないものがあった」程度ではなく、ほとんどが封をしておらず、封緘印は皆無でした。生き字引がいなくなった程度のことで業務の継続性が失われたのだとすれば、明らかに内部統制の欠陥です。はたして直近の都議選までも、「ちゃんと」やっていたのでしょうか。本来のやるべきことをちゃんとわかった上で言っているのでしょうか?

 確かに選管職員Aはやるべきことをある程度分かってはいました。やるべきことを平気でやっていなかったのは、執行規定の意味や必要性を理解していなかったからかもしれませんが、もし本当に意味をしっかりと理解しているのに、必要性を分かっていながら直近2回の選挙では故意に手を抜いたのだとすれば、より悪質です。

 が、その可能性も疑われます。市議会の過去の会議録を検索すると、開票事務のスピードアップ・効率化が問題視され、改善を求められていました。そのための効率化の一環として、作業を意図的に簡略化していたのかもしれません。

 開票所スタッフが、封をしていない封筒をわざわざ破って捨てていたのは、厳封されていた時の習慣なのではなく、証拠隠滅のためにそうすることが決められていたのかもしれません。一連の投票箱の搬入作業は迷いもなく、申し合わせているかに慣れた様子で執り行われていました。

 個々人の問題ではなく、組織として意図的にやっていたのであれば、問題はより深刻です。

 投票箱を投票所から開票所へ送致するのは投票管理者です。投票管理者は、選挙権を有する者の中から市町村の選挙管理委員会が選任した人です。開示請求で入手した投票管理者への通知文書にはやるべきことの概略しか書かれていませんが「投票管理者はそれぞれの投票所の最高責任者です。」とある上、「勘や過去の経験に頼らず、常に法規等に基づき行ってください。」とも書かれています。国立市選挙執行規程を遵守しなかったのは投票管理者の落ち度なのでしょうか?

 また、開票立会人説明資料にも「開票前に投票箱と鍵の異状を点検していただきます」と書かれているだけです。そして、集合時刻は午後8時20分となっています。しかし、その時間には既に投票箱の搬入ははじまっていました。選挙執行規程を遵守しなかったのは開票立会人の落ち度なのでしょうか?

 どちらにしても、選挙執行規程を実践するためには、さらに細かい具体的なマニュアルが必要です。

 選挙事務を管理し、選挙事務の専門家であるはずの選挙管理委員会が、一般の有権者が選挙における役割を担い責任をまっとうできるようにサポートすることは、重要な仕事の一つであるはずです。

 投票箱の鍵の管理方法を怠ったがために、運搬した投票管理者に不正がなかったことが証明することはできなくなってしまいました。

 選挙事務に関わった善意の市民を守ることができないような選挙事務は、破綻しているといっても過言ではありません。

 公選法によると、選挙事務は「市町村が処理することとされている事務」です。国政選挙は第一号法定受託事務です。地方自治法によれば、その選挙事務を管理しているのが選挙管理委員会です。市長は市の事務の全般について統括し、これを代表しているわけですから、選挙事務に関しても当然に責任があります。その市長の知らないところで問題が指摘され、知らない内に外部の都選管へ報告が出されているのは、組織のガバナンスとして問題だと思います。

 そして、開示請求で出てきた行政文書を見る限り、そうした越権的な報告が、当日の業務記録すらなく、実態把握や検証が一切なされずに選管内部のみで決裁されているのは、組織としての体をなしていないように思えてなりません。

 内部統制に欠陥がある、もしくはそもそも内部統制が整備されていないとすると、不適切な事務というに留まらず、不正がつけ入る隙だらけで、不正が横行している可能性すら危惧されます。

 また、開票事務には大勢の市職員も動員されています。選挙事務が専門ではないにしても、目の前でやっていることのおかしさになぜ気が付けないのでしょうか?

 選挙管理委員会だけの問題にとどまらず、国立市役所全体に通底している問題があるように思えてなりません。

 

 少なくとも直近2回の選挙で、国立市の開票事務は市民の信頼を裏切ったわけです。

 選挙管理委員会の予算調整や市職員を出向させている立場でもある市長と、選挙管理委員の選挙を行い罷免権のある市議会は、市民を代表して実態を解明し、市民の信頼を取り戻してください。

 

 陳情事項①、国立市長に対し、国立市選挙管理委員会の不適切な開票事務の実態を調査・検証し、再発防止策を策定するよう、要請してください。

不正検査の常識ではありますが、選挙事務は市の事務ですから、市は利害関係者です。利害関係のない不正調査の専門家による第三者委員会を設置することになるかとは思います。

 

 陳情項目②、国立市議会として、不適切な開票事務の実態を調査・検証してください。

 議会の責任において、調査権を用いて、公の場で実態を解明してください。

 

 陳情項目③調査・検証の結果、選挙管理委員としてふさわしくない者は市議会において罷免してください。

 議員は選挙管理委員の選挙人ですから、選んだ選挙管理委員の仕事をチェックし、職務上の義務違反や非行があれば罷免する責任があります。

 

 陳情項目④国立市選挙管理委員会に対し、責任の所在を明らかにし、適切な措置を講ずるように、要請してください。

 責任の所在がよくわかりません。どこにどんな責任があるのかを明らかにし、とるべき責任を取り、次の選挙に向けて早急に健全な体制を構築していただかなければなりません。